埼玉県寄居町のカウンセリングルーム

心のコラム

№66 自分のトリセツがわからない若者 ~どう関わればよいのか~

心のコラム

№66 自分のトリセツがわからない若者 ~どう関わればよいのか~


 思春期は自我の確立の時期ですが、ときに「自分が何をしたいのか分からない」と戸惑う若者に出会います。中には、「自分に関心がない」ように見える学生もいます。いわゆるセルフネグレクトの傾向です。
 背景には、家庭のかたちや生活環境の変化があります。共働きやひとり親家庭、再婚など、日々の生活に追われる中で、子どもと関わる時間が少なくなっています。子どもは小さな大人ではありません。本来は、誰かに気にかけられながら、自分の気持ちを出したり受け止めてもらったりする中で、「自分」という感覚を育てていきます。
 そうした関わりが少ない環境で育つと、「自分は大切にされていない」という感覚を持つことがあります。その結果として、自己肯定感や自己効力感の低下、無気力、自己ケアの後回しといった状態が重なりやすくなります。セルフネグレクトの傾向がみられる若者は、自分自身をケアする優先順位が低く、行動を起こすエネルギーも乏しくなりがちです。また、誰かに助けを求めるという発想そのものが浮かびにくいこともあります。
 自分のトリセツがわからない若者に、どのように関わるか。これはなかなか困難なミッションです。セルフネグレクトの状態にある若者にとって、「時間通りに起きる」「部屋を片付ける」といったことでも、大きすぎる課題になることがあります。ある研究では、「お風呂が難しければ顔だけ洗ってみる」「洗濯物を、1枚だけでいいからたたんでみる」といった、ごく小さな行動から始めることが大切だとされています。
 大切なのは「関心を向けること」です。名前を呼ぶ、短い言葉を交わす、変化に気づいて声をかける、そうした小さな関わりが、「自分を気にしてくれる人がいる」という感覚につながっていきます。思春期は、これまでの育ちの影響が表れやすい時期だといわれています。同時に、それは「育てなおし」「育ちなおし」が可能な時期でもあります。
 かけがえのない存在であると感じられること。自己効力感を育てていくこと。そうした関わりを積み重ねていくことが、本人にとっても、周りの人にとっても大切なのではないでしょうか。

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