埼玉県寄居町のカウンセリングルーム

心のコラム

№34 キャンセル文化とキャンセル界隈 

心のコラム

№34 キャンセル文化とキャンセル界隈 


 同じ「キャンセル」という言葉を使っていますが、その意味するところはかなり異なります。キャンセル文化が、「他者を裁く力」だとすれば、キャンセル界隈は「自分を守る知恵」とでもいえるかもしれません。
 キャンセル文化(カルチャー)は、有名人の言動や企業の製品などが社会的に好ましくないと判断された場合に、SNSなどで糾弾したたり、不買運動やボイコットなどによって対象を社会的にキャンセル(抹殺)しようとする動きで、信頼の低下や業績の悪化などを招くことがあります。
 「キャンセル界隈」というのは、特定の行動を「面倒くさい」などの理由で意図的に行わない人達やその行動に共感する集団をさす言葉です。面倒だという理由からお風呂に入らない人達を指す言葉が「風呂キャンセル界隈」ということです。他にも、「健康キャンセル界隈」、睡眠、食事など様々なキャンセル界隈があるようです、「残業キャンセル界隈」というのは、急ぎの仕事があるのに定時に帰ってしまう人達をいうようですが、上司や同僚ががかなり苦慮しているようです。 
 「キャンセル界隈」現象を単なる流行や怠惰と捉えるのは表面的な理解にすぎないという意見もあります。日常のさまざまな行動を「面倒だから」と避ける背景には、精神的な健康状態が大きく関わっている場合があるといわれています。特に風呂キャンセルや食事キャンセルなどの基本的な自己ケア行動の回避が続く場合、うつ病や不安障害、ADHDなどの精神疾患のサインかもしれないといわれています。
 重要なのは、「やりたくない」のか「できない」のかという区別です。単に面倒くさいと感じて一時的に行動を先延ばしにするのと、心理的な障壁によって行動そのものが困難になっているのでは、状況が根本的に異なります。日常的な「キャンセル」行動が2週間以上継続し、5つ以上の症状(抑うつ気分、興味・喜びの喪失、食欲の変化、睡眠の問題、疲労感、無価値感など)を伴う場合は、うつ病の可能性を考慮すべき時期だといわれています。誰かに配慮しすぎて自分を見失ったり、頑張りすぎて心がすり減ったりしたときに、「やめたい」「休みたい」と思うのは自然なことです。
 何をキャンセルしたいのか、なぜキャンセルしたいのか。その背景には、その人自身の価値観や生き方があります。それを一緒に整理し、必要な距離や選択を見つけていくことが、心の回復につながります。心理カウンセリング・ウィルは、あなたの疲れた心に寄り添いながら、無理のないペースで歩むお手伝いをしています。   

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