人間が生存するためには、危険や失敗に敏感である必要がありました。人口の1~2割が他の人間に殺されていた世界では、誰が誰に恨みを抱いているか、誰に気をつけた方がいいかという情報は、どこに行けば食料が手に入るかと同じくらい重要だった。というのが、「スマホ脳」の著者で精神科医アンデシュ・ハンセンの考えです。
彼は、これは脳が「警戒すべき情報」や「役立つ教訓」としてネガティブな情報を優先的に処理する仕組みに関係しているからだといいます。他人の不幸やミスを知ることで、自分がそれを避ける方法を学び、安全を確保する助けになるわけです。このように、他人の失敗に対する興味は、自己保存の本能に根ざした自然な反応であるという見解は納得できるものです。
現代のスマートフォンやSNS環境では、この人間の特性が過剰に刺激されることがあります。例えば、悪いニュースやスキャンダラスな話題が頻繁に目に入ることで、心理的な疲弊を招きつつも、それに引き寄せられてしまう状態が生まれやすいといえます。
ただし、噂話を通じて目を配るのは、敵から身を守るばかりでなく、互いに協力して生き延びていくための社交でもある、ということです。

心のコラム
№27 人はなぜ悪い噂が好きなのか

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