大学入学共通テストで、AIが9科目で満点を取ったというニュースが話題になりました。15科目の平均得点率も97%を超えたといいます。AIの能力がここまでくると、驚きを超えて、不安を感じる人も多いかと思います。
そもそも「知能」とは何でしょうか。一般的には、①抽象的に考える力、②経験から学ぶ力、③環境に適応する力が挙げられます。つまり「学び、考え、状況に応じて行動する能力」が知能だという考え方です。しかし、これだけでは、音楽に卓越した才能を発揮する人や、身体能力を活かして高いパフォーマンスを示すアスリートの力を「能力として」認めていないことになります。
この疑問から出発したのが、アメリカの心理学者ハワード・ガードナー(1943〜)です。ガードナーは、サヴァン症候群や脳損傷患者の研究を通して、人間には複数の独立した知能があり、それらが協調しながら働いていると考えました。これが「多重知能理論(Multiple Intelligences:MI理論)」です。彼が挙げた8つの知能は次の通りです。
①言語的知能:話す・書く・読むといった言語の感受性
➁論理数学的知能:分析・推論・数学的操作
➂音楽的知能:リズム・音程・音色の識別や表現
④身体運動的知能:身体を使って問題を解決する力
⑤空間的知能:空間のパターンを把握し操作する力
⑥対人的知能:他者の意図や感情を理解し関係を築く力
⑦内省的知能:自分自身を理解し、感情や行動を調整する力
⑧博物的知能:自然や人工物を分類し理解する力
ガードナーは、私たち人間の持つ多様な「能力」に光を当てました。物理学者もスポーツ選手も、私たちの社会を豊かものにしてくれるものです。これがMI理論の核心です。AIは多くの領域で人間を上回る技能を発揮します。
大学入学共通テストでAIのように満点を取る学生はほとんどいません。しかし、悲観的になることはありません。AIの持つ膨大な知識は、私たち人類が営々と築いてきた知性の集大成が詰まっているのです。人類のレガシーです。
スポーツや芸術が与えてくれる感動を味わうことができるとともに、AIというレガシーを存分に活用できる時代を生きていることに、むしろ喜びを感じたいものです。

心のコラム
№54 人間の知能とAIの知能 ~どちらにも自信のないあなたに~

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