出世すると業務量や責任が増えて大変そうだから、できれば昇進したくない。
最近、若い世代の人たちからこうした声を聞くことがあります。確かに、役職が上がれば業務量や判断の重さが増え、ストレスが大きくなるように見えるのも無理はありません。そのため、「無理に上を目指さず、今の立場でいたほうが楽だ」という考え方が広がっているようにも感じられます。
ただ、カウンセリングの場でお話を伺っていると、強いストレスを感じているのは、必ずしも責任の重い立場の人だけではありません。むしろ、「組織の方針に納得できない」「意思決定に関われない」「変えたいのに許可されない」といった、自らできる意思決定の裁量が低い状況に置かれている人の方が、強いストレスを抱えているケースが少なくありません。
仕事の負荷が同じでも、自分の意志でやり方を調整できたり、選択肢を複数持てるといった余地が「ある」か「ない」かにより、ストレスの受け止め方は大きく異なります。
地位が高くなると、当然、責任は重くなりますが、同時に、自分や組織を守るための環境を改善できることでもあります。必ずしも、「出世をすると大変」になるだけとは限らないのです。組織の中で地位が高いほど、コントロール・アビリティ(裁量の幅)が高まる側面があるとも言えるでしょう。
もちろん、出世を選ばない生き方も一つの大切な選択です。趣味や専門スキルなど、自分のコントロールできる世界で自己効力感を持つことは大切なことです。ただ、「責任が増える=不幸になる」と単純に結びつけてしまう前に、ストレスの正体がどこにあるのか、少し立ち止まって考えてみる価値はあるのかもしれません。その視点が、自分にとって無理のない働き方を見つけるための、小さなヒントになることもあるかもしれません。
