文部科学省の発表によると、不登校児童生徒数は、小学校137,704人、中学校216,266人、小・中全体で353,970人となり、過去最多を記録しました。とくに、小学校低学年の不登校が顕著に増加していることは、見過ごせない事実です。
子どもが外の世界に飛び立つには、失敗したり、傷ついたりしても「安心して帰れる場所」が必要です。しかし、共働き家庭や離婚による母子・父子家庭の増加により、子どもが放課後を過ごす環境は大きく変化しています。学童保育や祖父母宅、ひとりで過ごす時間が増える中で、「家庭=安心の場」という感覚が揺らいでいる子どもが、少なくないという気がします。
もちろん、学童保育や地域の支援は大切な役割を果たしています。ただ、そこに「情緒的なつながり」や「無条件の受容」が不足していると、子どもは孤独感や不安を抱えやすくなります。特に低学年の児童は、言葉にできない感情を抱え、大人のまなざしやぬくもりを必要とする時期です。
学生相談室で若者たちの悩みに耳を傾けていると、「愛情という栄養」が不足したまま育ってきた子どもたちが、驚くほど多いことに気づかされます。彼らは、親から虐待を受けたわけではありません。親もまた、必死に生きているのです。共働き、離婚、経済的な不安、そうした現実の中で、親子の時間は削られ、心の交流は後回しにされがちです。
宗教的なバックボーンがある国々では、教会や地域コミュニティが「心の居場所」として機能することがありますが、日本ではそうした場が希薄です。家族が孤立し、親も子も「誰にも頼れない」状況に陥りやすい気がします。
学校の教育システムや親子のすれ違いを責めるのではなく、社会全体で「愛情の循環」を取り戻す仕組みを考えること、それが、今、私たちに求められている課題ではないでしょうか。

心のコラム
№41 不登校の背景にあるもの

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