厚生労働省による令和3年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、全国のひとり親世帯のうち、母子世帯は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯です。母子世帯では、ひとり親世帯になった理由の79.5%が離婚によるものです。
ひとり親家庭では、経済面だけでなく、子育てを一人で担うことによる心理的な負担も小さくありません。経済的にみると、母子世帯の平均年間就労収入は236万円で、経済的な負担の大きさがうかがえます。
一方、父親がいないことによって生じる可能性のある心理的な問題について、精神科医の岡田尊司先生は『父という病』の中で、次のような点を指摘しています。
①母親への依存が強くなり、分離不安を生じることがある
②自分の欲求をコントロールすることが苦手になることがある
③不安が強く、ストレスに弱くなることがある
④一対一の関係から、集団の関係へ移ることが難しくなる場合がある
もちろん、父親がいないことが、必ずしもこうした問題を引き起こすわけではありません。子どもの成長には、父親の存在だけでなく、母親との関係、家庭の経済状況、離婚に至った経緯、親子関係、祖父母や教師など周囲の大人との関係、そして子ども自身の気質等、さまざまな要因が関係しています。
大切なのは、「父親がいるか、いないか」だけで子どもの成長を考えないことではないでしょうか。子どもにとって必要なのは、父親という「肩書き」だけではありません。
①安心して甘えられる人
➁必要なときには「それはダメ」と言ってくれる人
➂失敗したときに支えてくれる人
④そして、家庭の外の世界へ送り出してくれる人
そうした大人が身近にいることが、子どもの成長を支えるのではないでしょうか。父親の不在を問題にすることは、母親を責めることでも、ひとり親家庭で育った子どもに「あなたには問題がある」と伝えることでもありません。父親に代わる「誰か」を無理に探す必要もありません。
大切なのは、子どもの世界を少しずつ広げてくれる大人がいること。それが、「父親がいない家庭の子育て」を考えるときの、もう一つの視点なのだと思います。

心のコラム
№82 父親のいない家庭の子育て ~なにか問題ありますか?~

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