『無敵化する若者たち』(金間大介著)という本が話題になっています。著者が描く若者像を読んでいると、「共感する力が弱いのでは?」「どこか発達的に未熟なのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここで少し考えてみたいのは、心の状態をどう見るかという視点です。心理の世界には、大きく分けて二つの考え方があります。
一つは障害モデルです。これは「うまくいかない原因は、本人の内側にある」と考える見方です。たとえば、対人関係が苦手、相手の気持ちが読み取りにくい、状況に応じた柔軟な対応が難しい、といった特性がここに含まれます。医療や診断の場面では、とても大切で欠かせない視点です。
もう一つが社会適応モデルです。こちらは、「その行動は、今の社会に必死に適応した結果ではないか」と考えます。『無敵化する若者たち』で描かれる若者は、「できるだけ傷つかない」「責任を背負いすぎない」「将来に振り回されない」といった特徴を持っています。
これは「心が弱い」からというよりも、先が見えず、不安定な社会の中で身につけた生き方とも言えます。著者は、無敵化を「攻撃性」ではなく「防衛」だと捉えています。若者は強くなったのではなく、むしろ傷つきやすい社会の中で生き延びるために、鎧を少し厚くした、そんな見方です。いわば、専守防衛です。
これは、若者に限ったことではありません。カウンセリングルームにも、「自分の言動が場に合っていないと言われる」「自分なりに頑張っているのに評価されない」と悩む方が来られます。じっくりお話を伺っていくと、多くの方が「どうすれば迷惑をかけないか」「どうすればうまくやれるか」を、必死に考えながら過ごしてこられたことが伝わってきます。
適応できていないのではなく、適応し続けて疲れてしまっただけ、ということも少なくありません。大切なのは、障害か、過剰な適応か、どちらか一方に決めつけないことです。一人で考える時間も大切ですが、誰かと一緒に整理することも、同じくらい大切です。
もし今、「この会社、この環境に自分は合っていない気がする」「うまくやっているはずなのに、どこかしんどい」そんな感覚があるようでしたら、話すだけでも構いません。気軽にカウンセリングルームを訪れてみてください。

心のコラム
№58 無敵化する若者~失敗しないために、戦わない~

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