うつ病になるのは心が弱いからだ、もっとポジティブになれ、と今でもそうした言葉を耳にすることがあります。しかし近年の研究では、うつ病の一部には、心理的ストレスによって生じる脳や身体の炎症、神経ネットワークの変化などが深く関係していることが分かってきました。
先日のNHKスペシャル「病への挑戦 第2集 うつ病克服へのカギ」では、強いストレスが続くことによって脳の免疫を担う細胞が活性化し、炎症性物質が放出される仕組みが紹介されていました。また、脳だけでなく身体の炎症とうつ病との関係も注目されています。肥満や糖尿病、炎症性腸疾患、関節リウマチなど、慢性的な炎症を伴う病気とうつ病との関連についても研究が進んでいます。
うつ病が「心の弱さ」ではなく、脳や身体の問題でもあるのなら、カウンセリングには効果がないのでしょうか。そうではありません。従来、抗うつ薬は「セロトニンを増やす薬」と説明されることが多かったのですが、現在では、神経細胞同士のつながりや神経ネットワークの回復に働くことも重要だと考えられています。
一方、カウンセリング、とりわけ認知行動療法などの心理療法でも、新しい考え方や行動を繰り返し学習することによって、脳の働きや神経ネットワークに変化が生じることが分かってきています。
つまり、薬は身体の側から、カウンセリングは心や行動の側から。入口は違っても、どちらも「脳に届く」のです。
ただ、カウンセラーとして、もう一つ考えたいことがあります。過重労働や家庭内の不和、介護の問題、貧困や孤立など、その人を苦しめている環境をそのままにして、「あなたの考え方を変えましょう」「ストレスにうまく適応しましょう」と、本人だけに努力を求めてよいのでしょうか。
うつ病を「心の弱さ」にしないということは、病気になった人だけに責任を負わせないということでもあるのではないでしょうか。

心のコラム
№90 うつは「心の弱さ」ではないけれど~薬も、カウンセリングも、脳に届く~

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