人生どう生きるべきかと悩みながら歩んできたけれど、気がついてみれば、気力も体力も衰え、足もとがおぼつかなくなっている。いつの間にか「周囲に迷惑をかけずにどう死ぬか」という問題が差し迫っている。というのが、私たち高齢者の実感ではないでしょうか。
厚生労働省の最新データによると、日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳。これに対し、日常生活に制限のない「健康寿命」は男性72.57歳、女性75.45歳となっています。この二つの「差」、つまり介護や医療の手助けを必要とする期間は、男性で約8.5年、女性で約11.7年にも及びます。
この健康寿命について、群馬県等の自治体では単に病気や要介護でないことにとどまらず、心身ともに生きいきと働き、趣味や社会活動を楽しめる期間として「元気寿命」という言葉を使っています。
健康寿命が「身体的に支援を必要とせず暮らせる年数」という制度的・客観的な指標であるのに対し、元気寿命は「生きがいを持って主体的に社会とつながり続けられる年数」という、よりQOL(生活の質)や精神的な健やかさを意識した表現として使われています。
たとえば80歳で、買い物も料理も一人でこなせる。けれど、誰とも会話せず、何の楽しみもなく「生きていても仕方がない」と感じている人がいたとすれば、それは「健康」であっても「元気」とは呼びにくいのではないでしょうか。逆に、身体的には誰かの支援が必要であっても、友人と笑い、絵を描き、恋をして(笑)、明日の予定を楽しみに生きている人はどうでしょうか。
ここには、「自立」という物差しだけでは測りきれない確かな「元気」が存在しています。ピンピンコロリが理想とは言われますが、いかに生きるかが難しかったように、いかに死ぬかもまた一筋縄ではいきません。いかに長く生きるかだけではなく、いかに元気に生きるか。そして最後には、いかに自分らしく死ぬか。

心のコラム
№85 健康寿命と元気寿命~人生いかに死すべきか~

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