埼玉県寄居町のカウンセリングルーム

心のコラム

№83 もう別れてもいいですか?~妻からの三行半(みくだりはん)~

心のコラム

№83 もう別れてもいいですか?~妻からの三行半(みくだりはん)~


 垣谷美雨さんの『もう別れてもいいですか』を面白く読みました。小説の内容は、長年、夫や家族のために我慢を重ねてきた50代の主婦が、「もう、この結婚生活を終わりにしてもいいのでは」と人生を見つめ直していく物語です。
 離婚したくても、経済的な不安や長年の習慣、世間体などが壁となり、簡単には踏み出せません。「妻だから」「母だから」と自分を後回しにしてきた女性が、自分の人生を取り戻していく姿が描かれています。
 夫婦とは何か、そして人生の後半を誰のために生きるのかを考えさせられる小説です。この小説では、過酷な職場で神経をすり減らしている夫たちは、ほとんど擁護されません。長年連れ添った家庭生活で、妻が少しずつ不満を積み重ねていきます。その一つ一つは、はたから見れば「そんなことくらい」と思えることかもしれません。けれど、それが何年も、何十年も積み重なってくると、「もう、十分でしょう」という日を迎えることになります。
 タイトルの「もう別れてもいいですか」には、「私は、もう十分に我慢したのではないでしょうか」という問いかけが込められているように思います。SNSを覗いてみても、子育てや家事に関心をもたない夫に対する妻たちの「呪詛」であふれています。「うちの夫も同じです」「どうして男って、こうなんでしょう」「もっと早く別れればよかった」と、夫への罵詈雑言が、これでもかと語られています。
 愛は、その人の成熟とともに、形を変えていくことがあります。最初は夫に従属し、言いなりだった妻が、次第に自己に目覚め、夫に対して主張するようになり、対等の関係を持つようになったり、夫を従えるような関係になったりすることも珍しくはありません。
 精神科医の岡田尊司先生は、「性欲の衰えとともに死んでいく愛もあるが、子孫を残そうとするがゆえの生物学的ワナから逃れ、より精神的な結びつきへと高まっていく愛もある」と語っています。夫への不満を並べることと、夫婦の関係を終わらせることは同じではありません。大切なのは、自分はこれからどう生きたいのかを考えることなのです。『もう別れてもいいですか』の主人公・原田澄子は、最後にこうつぶやきます。
「離婚は私の勲章です。なんか文句ある?」
 妻に三行半を突き付けられた夫の皆さん。『風と共に去りぬ』のラストで、レット・バトラーに去られたスカーレット・オハラは、「明日は明日の風が吹く」とつぶやきます。さて、立場が逆の皆さんに、明日の風は、どちらから吹いてくるのでしょうか

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