自分ではきちんと対応しているつもりなのに、なぜかうまくいかない。思っていることを口にしただけなのに、相手にいやな顔をされる。黙っていると「感じが悪い」と言われ、気を遣っているつもりなのに「配慮が足りない」と言われる。
自分は発達障害なのではないかと医療機関を訪ねても、「診断基準には当てはまりません」と言われてしまう。医学的には、発達障害は「発達早期から特性が存在していること」が診断条件とされています。そのため、成人してから“新しく発達障害になる”ことはありません。ただし、子どもの頃に見過ごされていた場合や、周囲の支えで目立たなかった場合には、大人になってから初めて診断される人も少なくありません。
一方で、障害の診断はつかないけれど、生きづらさを強く感じている人たちがいます。いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる人たちです。精神科医の岡田尊司先生は、こうした人たちの背景には、生まれつきの特性だけでなく、成育歴の影響が関わっている場合も多いと指摘しています。しつけに厳しい家庭で育った、甘えることが許されなかった、不安定な環境で育った――そうした体験が、ADHDに似た困りごとや対人関係の難しさを生むこともあるのです。岡田先生はこれを「発達性トラウマ障害」と呼び、『発達障害 グレーゾーン』という本の中でいくつかのタイプに分類しています。
①同じ行動をくり返しやすい人(こだわり・執着が強い)
➁空気が読みにくい人(社会的コミュニケーションの苦手さ)
➂イメージするのが苦手な人
④共感がうまく働きにくい人
⑤ひといちばい過敏な人
⑥生活が混乱しやすい人(疑似ADHD)
⑦動きがぎこちない人
⑧勉強が極端に苦手な人
これらの人たちは、怠けているわけでも、努力していないわけでもありません。むしろ、人一倍頑張ってきた人たちです。困りごとは性格のせいでも、能力不足のせいでもありません。自分を責める前に、まずは客観的に自分を知ることから始めてみてください。どんな場面で疲れるのか、どんな言い方だと混乱するのか、どんなときに安心できるのか、うまくいったとき何がよかったのか。それを「自分用のトリセツ」として、記録してみてください。あなたを守るための大切な情報となるはずです。
グレーゾーンの人たちは、見えない段差の多い道を、誰よりも慎重に歩いてきました。弱いのではありません。ずっと難しい場所で生きてきただけなのです。誰かと同じでなくていいのです。自分自身の普通を見つけてください。「自分用のトリセツ」を手にしたとき、生きづらさから少しだけ解放されると思います。誰かの援助が必要と感じたら、心理カウンセリング・ウィルにおいでください。

心のコラム
№53 発達障害のグレーゾーン ~診断はつかないけれど苦しんでいる人たち~

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