学生との面談で、「反抗期はありませんでした」と話す学生に出会うことがあります。ご両親が聞いたら、きっと嬉しいでしょう。「うちの子は素直で良い子だった」と思うかもしれません。もちろん、親子の仲が良いことは悪いことではありません。
しかし発達心理学では、思春期の反抗は自立に向かう自然な過程と考えられています。反抗期は、親を嫌いになる時期ではありません。「お母さんはそう言うけれど、私はこう思う」「お父さんの考えもわかるけれど、自分は違う」そんなふうに、自分自身の価値観や考え方を育てていく時期です。
心理学者のエリクソンは、青年期の課題を「自我同一性(アイデンティティ)の確立」と述べました。簡単に言えば、「自分はどんな人間なのか」を見つける作業です。反抗期は、そのための大切な練習期間とも言えるでしょう。ところが最近は、とても仲の良い親子が増えました。一緒に買い物に行き、推し活を楽しみ、何でも相談する親子も珍しくありません。微笑ましい光景ですが、その一方で、「進路は親と相談して決めます」、「自分ではよくわからないので親に任せます」という若者も少なくありません。
発達心理学では、子どもが成長するためには親との間に適度な心理的距離が必要だと考えられています。親子の距離が近すぎると、自分で考え、自分で決める機会が少なくなることがあります。その結果、社会に出てから上司に注意されたり、友人と意見がぶつかったりした時に、思いのほか戸惑ったり、落ち込んだりすることもあります。
反抗期は、親との衝突を経験するだけでなく、他者との違いを受け入れながら自分自身を育てる時期でもあります。しかし、大切なのは反抗期があったかどうかではありません。お子さんが自分なりの意見や価値観を持ち、親と適度な距離を保ちながら成長できているかどうかです。もし反抗期がなかったとしても心配し過ぎる必要はありません。子どもが親と違う意見を言い始めたら、それは成長のサインかもしれません。頭ごなしに否定するのではなく、「そういう考え方もあるね」と耳を傾けてみてください。
足りない部分は親がそっと見守ることが、お子さんを自立へ導く大切な一歩になります。お子さんの成長について気になることがありましたら、どうぞお気軽にカウンセリングルームへお越しください
